2012年5月1日火曜日

躑躅

物不念  路行去裳  青山乎  振酒見者
都追慈花 尓太遥越賣 作樂花  佐可遥越賣
汝乎叙母 吾尓依云  吾乎叙物 汝尓依云
汝者如何念也  念社   歳八年乎
斬髪   与知子乎過 橘之   末枝乎須具里
此川之  下母長久  汝心待

柿本人麻呂


物(もの)思(も)はず、道行く行くも、青山(あをやま)を、振り放(さ)け見れば、
躑躅花(つつじはな)、にほえ処女(をとめ)、桜花(さくらばな)、栄え処女(をとめ)、
汝(な)れをぞも、吾(あ)に寄すといふ、吾(あ)をぞも、汝(な)れに寄すといふ、
汝(な)はいかに思ふや、思へこそ、年の八年(やとせ)を、
切り髪(かみ)の、よち子を過ぎ、橘(たちばな)の、ほつ枝(え)をすぐり、
この川の、下にも長く、汝(な)が心待て


物思いせずに道を歩いて、青い春の山を振り返れば、
そこに咲いているツツジのようにきれいな君、桜のように美しい盛りの君。
そんなあなたをわたしに引き寄せると言う。わたしをあなたに引き寄せるという。
しかし、荒山でも人が心を寄せれば、山も人に心を寄せると言うことだ。
8年の年月を、子供ならば断髪姿の稚児を過ぎる年頃になる、
長くのびた橘の末枝ほどの年月を過ごしてきた。
この川が下流に長くつづくように、あなたも気長に待ちなさい。


躑躅(ツツジ)って字はおよそ花らしくない漢字をあてる。
本来は「てきちょく」と読み、行って止まるとの意味を持つ。
中国で毒性のあるツツジを羊が誤って食べたところ、足ぶみしてもがき、
蹲(うずく)まってしまったと伝えられたことから漢字になり伝わったようだ。
万葉集では5月の花、皐月(サツキ)ではなく、躑躅(ツツジ)がよく読まれている。



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